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「……ねぇヴィヴィアン、オルヴェは?」 「寝てるよ〜」 「またぁ!?」 冒険者たちも大半出かけて静かな午前が過ぎる湖の貴婦人亭を震わせたのはまだ若い占星術師の少女──アリシアの怒り半分呆れ半分の怒号だった。 驚き逃走を図ろうとする愛猫を捕獲したヴィヴィアンにアリシアは顔を赤くしながら我に返ると、威嚇してくるマーリンさんに小声で謝った。 「こほん……でも流石にずっと寝てる訳じゃないでしょ?」 「うん。夜中とか早朝とか起きてるみたいだけど~なんかすぐどこか行っちゃうんだよねぇ」 「どこか……ってオルヴェ外出してるの!?」 「多分」 ヴィヴィアンの真面目にやっているのか分からないような受け答えにアリシアはうんざりした様子で片眉を吊り上げながら頭を振る。 一応彼女の話によればオルヴェが夜中に起きているのをたまに見かけるそうだが話しかける暇もなく宿から飛び出して、帰ってくるのはアリシアたちが留守のときや眠っている時ばかり。 ……朝ならオルヴェが起きているかもしれないと踏んで、無理を言って早めに探索を切り上げて戻って来たのだがどうやら失敗だったようだ。 「あいつに会えないからってガキと猫に当たるなよ」 「うるさいヴィーザル、人数足りなくて困ってるのは事実なんだから仕方ないでしょ」 「いてっ」 仲間たちの待つテーブルに戻ったアリシアは余計な事を言ってくるヴィーザルの頭を拳で小突くがその整った顔には深い皺と隠しきれない焦燥が刻まれていた。 目立ちたがり屋で仲間思いなオルヴェらしくない人目を避けるような行動に安穩なエドもため息をつき、パーティの妹分であるイリスは不安そうに橙色の瞳を俯かせていた。 「やっぱりおかしいよね、もう一週間だよ」 「一日二日くらいなら分からなくもないけど流石に、ね」 「この忙しい時にグースカ眠りやがって……」 「ちょっとヴィーザルくん!」 「唯一っぽい目撃者のヴィヴィアンも詳細不明、ベータには聞けない、さぁどうする参謀殿?」 わざとらしいくらいのため息を吐きながら悪態をつくヴィーザルの気持ちも、それを窘めるエドの考えも分からなくはない。 ……碧照ノ樹海で獣王ベルゼルケルを撃破したあの日からもう一週間。 空席になった支配者の座を巡る争いかそれとも住処を侵略する冒険者たちへの復讐心か、今現在の碧照ノ樹海は凶暴化した熊の魔物が跋扈しておりこれまで以上に死傷者が出ているのだ。 欠員の出たアルゴノーツも協力してくれる冒険者のお陰で何とかやっているのだが、最近では森の破壊者よりもさらに強力な熊の目撃情報やマギニアの街外れに野生の狼が現れる始末だ。 獣王ベルゼルケルを撃破したギルドとして他の冒険者や司令部の期待に応えるためにもまずは全員揃う必要がある、アリシアはそう考えているのだが頭痛の種が増えるばかり。 両指を組んで難しい顔をしていたアリシアはやがてソファから勢いを着けて立ち上がる。 ……少女の双眸が指し示すのは宿の二階への階段だった。 「仕方ないわね、オルヴェの部屋に行くわ」 「えっ」 迷いのない足取りで階段へと歩み寄ろうとするアリシアの細い腕を咄嗟にエドとヴィーザルは両サイドから引き留める! 「なっ!何よ!?」 「出かける前見た時は完全に寝てたぞオルヴェのやつ」 「今も寝てると思いますよ!?」 ……緊急事態とはいえ歳の近い異性に許可なく部屋を見られるのは流石にオルヴェがいたたまれない。 二人は顔を引きらせながら止めようとしたが残念ながらアリシアにその熱意や同情なんて甘っちょろい考えは通じず、みぞおちに鋭い肘がねじ込み拘束が緩んだ隙に彼女はするりとスカートを翻しながら抜け出した。 「ちょっと覗くだけなら五分以内で済む。ベッドの下覗こうとかタンス漁ろうって訳じゃないんだから」 「待ってよアリシアちゃん!おいてかないで~!」 無慈悲な宣言を口にしながら階段を上るアリシアを慌てて追いかけるイリス。 ……もはやエドたちがオルヴェにしてやれる事は彼女たちよりも早く何かしらの証拠を見つけるしか残されていなかった。 「ちょっと良心が痛みますね」 「……オルヴェ、骨は拾ってやるからな」 湖の貴婦人亭は全三階建ての冒険者向けの宿泊施設だ。 一階はヴィヴィアンたち管理人家族や食堂が、二階からは冒険者用の部屋が並んでおり一列になって進んでいたアリシアはある一部屋の前で立ち止まると丸いドアノブを静かに静かに捻る。 相変わらず物が散乱している部屋の床や壁は淡い空色のカーテン越しの日光で水底のよう、床に置かれた鞄、椅子の背もたれにかけられた羽織、机の半分を占領するどこで拾ったのかわからない石や枝、自分の部屋と比べあまりの散らかりっぷりに頭が痛くなってくる。 ……そして一番奥のベッドの上にあるシーツの固まりからは規則的な寝息が聞こえてきた。 「ほらな、寝てるって言っただろ」 「なら好都合ね、起こすのも可哀想だしさっさと調べるわよ」 「えっ、入るんですか」 もういいだろ、と言わんばかりの男子二名の静止も虚しくアリシアは躊躇することなく部屋に足を踏み入れる。 そのまままっすぐベッドへ向かい、一定のリズムで膨らんでは縮むシーツを白い指が捲ると少し日に焼けた幼い寝顔が晒された。 「……」 (……寝てる) アリシアたちが知るオルヴェはまるで動き回っていないと死んでしまうのかと思うほど騒がしい、シーツも枕も蹴り飛ばすものだと言わんばかりに寝相も悪い。 そんな少年が今はまるで胎児のように無防備に体を丸めベッドに身を預けていたのだ。 アリシアが頬を突いてやると薄く開いた口から嫌がるように喃語をこぼしながら眉間にしわを寄せる……この表情は少し癖になりそうだ。 「……何ていうか、オルヴェにしては寝相が大人しいわね」 「ふーん、やっぱ専門家から見たら違うのか」 「はぁ!?」 「あ、二人とも静かに……!」 ニヤニヤと半笑いで茶化すヴィーザルに即座に噛みついたアリシアを宥めつつ、エドたち四人は改めて少年の部屋を物色することにした。 サイドテーブルの定位置にはサテンのフカフカとしたクッションとベータが鎮座し、丈夫な衣類やきらりと輝く青の防具もいつもと変わらない位置にかけてある。 子供の頃と変わらず物は多いものの、怪しげな品やオルヴェらしくない物があるとかそういう違和感は何一つとして見当たらない。 「もうオルヴェくんが大人しく寝ているくらいしか変なところがないですね」 「よね……あら、」 そろそろ部屋を出ようかとイリスに声を掛けると彼女は壁にかけられた赤色のマントをまるで魅入られたようにじっと眺めていた。 「どうかしたのか」 「いやぁ、これって……」 そう言いながらイリスは壁にかけられた赤いマントについていた『それ』に上半身ごと手を伸ばすと、三人の目の前に差し出した。 ──『それ』は緑色をした細長く平たい葉っぱだった。 「……葉っぱ、ね」 「で、この葉っぱがどうかしたのかよ」 「そこら辺に生えているものと変わらないような気もしますけど……なにか分かったんですか?」 「あれれ……」 まだ枝から落ちて日が浅いのか表面は滑らかで鮮やかな緑色が目を引くが、だからどうしたと言う風にヴィーザルは鼻を鳴らしながら肩をすくめる。 訳が分からないと言いたげなヴィーザルたちにイリスはうぅんと、どう説明したらいいのだろうかと頭を捻りながら言葉を発した。 「えっと、オルヴェくんはマギニアに戻ってから一回も樹海に入ってないよね?」 「ええ、そうだけど?」 「エドくんとヴィーザルくんも宿に入る時は服を払ってから入るよね?」 「うん、だけどそれが──」 イリスの言葉に首を傾げていたエドだったがそこまで言った直後、灰色の垂れ目を大きく見開いて『あっ』と声を上げた。 「じゃあオルヴェくんは一人で勝手に樹海に出かけてるってことですか!?」 「なっ!?でも流石に何も言わずになんて──!」 「……ぅぅん」 「!!」 直後シーツの中から不快そうなうめき声が響きアリシアたちは驚いた猫のように団子になりながら階段を駆け下りる羽目になったのだった。
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「オルヴェくん起きるかと思ったぁ……」 「と、とにかく状況を把握しないとね」 テーブルに戻り未だ跳ねる胸を抑えながらアリシアは額をぬぐう。 ……調べに行く前は半分やけくそ気味の提案だったのだがまさか本当に部屋の中に証拠があるなんて。 アリシアがカールした金髪を人差し指にまとわせながらチラリと目線をやると葉っぱを見つけた張本人であるイリスは逡巡しつつも首を縦に振った。 「イリスはオルヴェが黙って外出してるって、そう思うのね?」 「だってひとりでに葉っぱが服に付くなんて思えないもん」 「それには私も同感だけど……」 「マーリンさんが勝手に部屋に入って持ってきたって可能性はねぇのか?」 「うーん、そう言われたらそうかもしれない……よねぇ」 両端のアリシアとヴィーザルから矢継早次に飛んでくる質問にイリスは自信なさげに段々顔を俯かせ、最終的にはソファの上で小さく縮こまってしまった。 「でもマーリンさんの仕業だったら他の場所に痕跡が残ってるはずですから、それは無いんじゃないですか」 「じゃあ違うか」 「オルヴェくん……一体何してるんだろう」 エドは自分の隣で自信なさげに丸くなってしまったイリスの背を擦りつつ改めて謎の葉っぱを日光に透かしてみた。 ……全体的に波打って柔らかそうな見た目をしているが丈夫な葉っぱは四人で回し見てもまだしっかりと形を保っている。匂いも質感も作り物とはとても思えない。 「どこかで見たような気がするんですが……うーん」 「クヌギやクスノキじゃないよね、宿の周りの街路樹はイチョウだし」 「こんな葉っぱ一枚を調べるよりも本人を叩き起こせば早いと思うが」 「流石にそれは可哀想でしょ……はぁ、図書館から植物図鑑でも借りてこようかしら」 どこかで見たことのあるような、無いような、眉間にシワを寄せた四人が葉っぱを凝視していると不意に頭上から若い女性の声が降ってきた。 「それってシアの木の葉っぱじゃない?」 ヴィヴィアンの声でも女将の声でもない、聞き慣れた明るく若い女性の声にアリシアたちはビビったネズミが跳ねるような動きで顔を上げる! ……声をかけてきたのはなんと司令部で出会った女冒険者ウィラフだった。 「う、ウィラフさん!?どうしてここが!?」 「あなた達のリーダーがまだ復帰してないって聞いてね、宿の場所を聞いて来たのよ。ほらお見舞い」 「お、おう……」 「もしかしてみんなで伐採の勉強中だった?」 慌てるアリシアたちとは対照的に溌溂とした笑みのウィラフは手に持っていた果物入りの籠をテーブルの上に置くと茶目っ気たっぷりにウインクしてみせた。 彼女はからかうような笑みを浮かながら件の葉っぱをつまみ上げると懐かしそうに目を細める。 「シアの木ってタルシスにも生えてたんだけどこの島だとあんまりなくてね。小さな果樹林にしか生えてないんだよ」 「小さな果樹林?」 「ベースキャンプと碧照ノ樹海の間辺りにある初心者向けの小迷宮よ」 もうあなた達も行ってきたのかしら、クスリと笑って小首を傾げるウィラフにヴィーザルたちは曖昧な笑みを浮かべつつゆっくりと目を逸らし素早くテーブルの端に集合する。 「……小さな果樹林なんて知らねぇぞ」 「でもこの葉っぱってその、小迷宮?にしか生えてないんですよね?」 「ああ……マジで意味が分からん」 声を潜め、難しい顔で食い気味に話しかけてくるエドをたしなめつつもヴィーザルはシアの葉を睨みつけながら舌打ちする。 ……小さな果樹林どころか『小迷宮』すら今の今まで自分たちは知らなかった。 そんな未知の場所にたった一人で、しかも何も言わずにオルヴェが赴いているのだとしたら心配どころの話ではない。 能天気とはいえ危険なことは自分一人で解決しようとしがちなオルヴェの事だ、否が応でも最悪のパターンが浮かんでくる。 「ま、まさか……オルヴェくん何か危ないことに巻き込まれてるんじゃ!?」 「何も言わずに私たちも知らないような迷宮に行くなんて何考えてるのよ!病み上がりなのに!」 「……もしかして何かあったの?」 後輩冒険者たちのただならぬ様子に次第にウィラフも表情を強張らせ、やがてソファに腰掛けると心配するような低い声で尋ねてきた。 「えっと、そのなんていうか……」 「……実はオルヴェの事なんだが、」 心配そうに見下ろしてくるウィラフにどう伝えるべきかとイリスは言葉を詰まらせるが、ヴィーザルはため息をつくと女性の心配したような目を見つめこれまでの事を語りだした。 人目を避けるようなオルヴェの謎の行動、アリシアたちが行ったことのない小さな果樹林の植物が付いたマント。 話しながら俯いていくヴィーザルたちに釣られウィラフの表情も厳しい物になっていたが、話が終わると彼女は腕を組んだまま頭を縦に振った。 長い白髮を掻きながらため息をつくヴィーザルの言葉に嘘や偽りは無い。 ……彼らは本気でいなくなったリーダーの少年を心配しているのだ。 「……確かに奇妙ね。話を聞く限りだとオルヴェくんって勝手にどこかに行くタイプでも、みんなとケンカしてた訳でもないのね」 「小さな果樹林の事も知らないだろうし、だから気になるんだよ」 「……分かったわ。小さな果樹林の場所はこの辺り──」 「あの、ウィラフさん。相談があるんですけど」 「?」 不意にヴィーザルの隣で丸くなって座っていたイリスが顔を上げる。 何かを強く決心したようなオレンジの目は瞬きもせずにじっとウィラフを見据えており、他の三人も少女と同じように先輩冒険者である彼女に向かって懇願するような表情を浮かべていた。 「私たちと一緒に小さな果樹林に行ってくれませんか!?」 「えっ!?」 「一緒に小さな果樹林でオルヴェを待ち伏せしてほしいの!」 オルヴェの代わりに探索を手伝ってくれている上でこんな事を頼むのは厚かましいけれど、とイリスがウィラフの手に縋りついたを皮切りにエドたちも身を乗り出して彼女に頭を下げる。 「お願いしますっ!」 「でもオルヴェくんがいつ現れるのかは分からないのでしょう?碧照ノ樹海の事もあるし……」 流石に親しいとはいえ他のギルドの問題に首を突っ込むのは少し躊躇してしまうらしくウィラフは唇を尖らせるが畳み掛けるようにアリシアはすかさずテーブルに自身の財布を叩きつける! アリシアが動くのと同時にヴィーザルたちも各々個人の小遣いであろうコインの入った袋を取り出した。 「報酬ならいくらでも払います!だからお願いしますウィラフさんっ!」 「ええっ!?」 まだ新米のアルゴノーツは決して裕福ではないギルドなのは既知だ。 ……そんな彼らの口から躊躇無く飛び出した『いくらでも払う』という言葉にウィラフはすでに困惑や拒否よりも興味が勝っていた。 「でもどうして私に?もしかして、衛兵隊に頼んだり出来ない訳があるの」 「オルヴェの野郎、ヴィヴィアンたちとも交流を絶ってるってことは何か『外出を知られたくない』理由があるとしか思えねぇ」 「だから直接聞いても教えてくれないと思うんです……オルヴェくん、そういう頑固なところがあるんで」 「ははぁ……成る程ね」 ……言われてみればオルヴェは怪我人を見捨てられず仲間を逃がすために一人で獣王ベルゼルケルに立ち向かった。 面倒事を一人で抱え込む性質だというのも頷けるし、憧れの先輩冒険者が居るとなればオルヴェも黙って逃げるわけにはいかないだろう。 相手の弱点を熟知し考え合っての頼みというのなら悪くない、これも冒険者に必要なスキルだ。 ウィラフは勢いよく立ち上がると真剣そのものな眼差しで見上げてくる後輩冒険者たちに向かって力こぶを作って見せた。 「ここまで頼まれたら断るわけにもいかないし、ついて行ってあげるわ」 「ほ、本当に!?」 「勿論よ!」 それに今は私もアルゴノーツの冒険者なんだし、とウィラフは冒険者たちに財布を投げ返していたずらっぽくピースすると鞄の中から一枚の紙片を取り出す。 「代わりに私からも依頼させてもらっていいかしら」 「えっ私たちに!?」 「俺らド新米に手伝える事なんてあるのか?」 驚愕のあまり裏返った声でテーブルに身を乗り出すイリスを小突いて席に戻したヴィーザルだったが彼の冷淡な声も強張り緊張がにじみ出る。 ……熟練冒険者、それも自分たちの子供のころから第一線で活躍していたような冒険者の力になれるようなことなんてあるだろうか。 置かれた羊皮紙をのぞき込むとそこには占星術ギルドの紋章と天球儀らしき挿絵、一番上には『貸し出し許可証』という文字が記されていた。 ……挿絵の天球儀は”冒険者”に求められる火力よりも研究者や学者が求めるエーテルの集積や観測に特化した、専門店でも軽く五十万エンは余裕で越える高級品。 記された情報に何となく違和感を覚えたアリシアが頭を上げるとウィラフは問いかけるような少女の赤い瞳に対しいつになく真剣な表情で頷いた。 「頼みごとっていうのはさ──獣王ベルゼルケルの居場所を占星術で占ってもらいたいの」
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夜風の音すら大きく聞こえるような真夜中、新緑の果樹林の間を猛スピードで駆る魔物が一匹。 狂乱の角鹿と呼ばれるその魔物は靭やかな肢体を力強く振るい、若草の上を暴走馬車のように走り抜ける。 小迷宮の中を縦横無尽に逃げ回る獣の背を追うのは青白く輝く剣を握る緑髪の少年、そしてその彼そっくりな姿をした青く光る影法師たちだった。 「あとちょっと……!!」 ……奴を追跡し始めてもう十分は経っている。なんとか振り切られないようには追いかけているもののそろそろ限界が近い。 でもそれは相手も同じはずだ、今までは掛からなかった罠にさっき足を取られかけていたから。 鹿を追うオルヴェは酸素不足でガチガチと震えだした歯を音がなるほど噛みしめてもう鼻と口で同時に空気を吸い込んだ。 この数日、ディオスクロイに課せられた試練を達成するために夜な夜なオルヴェはこの小迷宮を訪れターゲットである狂乱の角鹿を観察していた。 ベータやディオスクロイのアドバイスを受けながら観察を続けた結果、ある一つの情報が分かった。 今追いかけている狂乱の角鹿……まっすぐとした一本道なら何者でも追いつけないスピードが出せるようだがカーブに差し掛かったその時『二歩程度のわずかな一瞬だけ』ぐっと減速するのだ。 ──暗闇もその先をも見通さんばかりに目蓋をかっぴらく。 駆ける蹄が引き絞られた弓のように弧を描いた小道に差し掛かった瞬間、オルヴェは脚にすべての血液を全集中させ地面を蹴り飛ばす! 『──マスター、今です!』 「そこだぁぁ──っ!!」 逃げる狂乱の角鹿の速度が落ちた直後、受け身のことを考えずに跳んだオルヴェは右肩ごと剣を大きく振りかぶり残影の刃を相手めがけて振り下ろした! 青く輝くオルヴェの残影は振り抜かれた勢いのまま青い光線のようになって放たれる! 渾身の一撃が全力で逃げ出そうとする狂乱の角鹿の無防備な背に叩きつけられ、直後に狂乱の角鹿は馬の嘶きのような断末魔を響かせながらその場にドウと倒れ込んだ。 「っあ……はぁ……っは……」 地面に倒れ伏した身体に力を入れ、立ち上がる。 ……打ち付けた胸と腹が割れそうなくらい痛い、軽鎧とはいえ鎧のまま地面に全力で飛び込んだから当然か。 ここまで走り続け、残影を出し続けて愚直に相手を追っていたオルヴェはベータを杖代わりにしながら地面に横たわる野獣に近づいた。 ──本当に、倒したのか? ピクリとも動かない狂乱の角鹿の背中には大きな切り傷があり、そこからドクドクと溢れ出す生命の源が美しい紫の毛皮を赤黒く染め上げていた。 生ぬるい鉄の臭い。目の前の獣かそれとも自分の頭の奥からか、むせ返るような死の香りがカラカラに乾燥した鼻腔を刺す。 「や、やった……やったぞーーっ!遂にオレが!一人で倒したぁっ!!」 討伐した狂乱の角鹿を前に先程まで全身で息をしていたオルヴェは疲労も忘れその場で飛び跳ねまくる! ……腹の底から湧き上がってくる歓喜の衝動のまま、少年は夜の樹海に雄叫びを響かせた。 『やりましたね、マスター』 「だろ!?オレはやれば出来るんだって!」 慇懃無礼なベータも自分と同じように嬉しいのかいつもの皮肉っぽくない褒め言葉にオルヴェはますます胸の中が温かくなっていった。 そりゃあそうだ。ただ倒したわけじゃない、一人と一振りだけであの恐ろしい魔物を倒したのだ!! 「……まさか本当に一人で倒してしまうとはな」 「師匠!見てくれよ!オレ一人でこの魔物を倒したんだぜ!!」 「ああ、もちろん見ていたとも」 ベータの褒め言葉に続き、林から拍手をしながら現れたディオスクロイにオルヴェは飛びつかんばかりの勢いで走り寄る。 無邪気に自身の成果を指差す少年にディオスクロイの仮面越しの表情も自然と緩み、緑の瞳を細めて何度も頷いてやった。 「どうだ?残影を用いた戦いにはそろそろ慣れてきたか」 「ん、おう!」 オルヴェが地面の丸太に腰掛けると──数日前から修行中に差し入れてくれるようになった──ディオスクロイから夜食のサンドイッチと温かい飲み物を渡される。 いつものように修行の成果を報告しつつ差し入れをこぼす勢いで頬張っていると小さく笑われ、オルヴェも男と同じように笑いながら頭を掻いた。 ……まだ残影を盾にしたり囮にして強烈な一撃を食らわせるディオスクロイのようなテクニカルな動きは出来ていないが、それでも勝利は勝利だ。 「まぁ、まだ出してそれっきりなんだけどな~……本当にこれで強くなれるのかな」 「諦めるのならそこまでだが……お前の努力次第では私の技を授けてやらんこともない、さぁどうする?」 「ええっ!?本当に!?じゃあオレもっとやるよ!!」 「フン、よろしい」 (単純ですね、マスター) 技を教えてやるという言葉に先ほどまで猫背になっていたオルヴェは即座に背筋を伸ばして目を輝かせ、そんな少年の態度の変わりようにディオスクロイはいたずらっぽい微笑みを見せる。 オルヴェはサンドイッチの残りを急いで胃の中に押し込むとベータ片手に別の魔物を探して果樹林の中へ飛び込んでいった。 「ところでオレが修行を頑張ったらどんな技教えてくれるんだ?」 ……応えはない。 普段ならどんなに遠くても静かな声がすこし面倒くさそうに返事してくれるのだが、今は鈴のような虫の声すら聞こえない。 不思議に思ってゆっくりと首だけ後ろに回してみると食べかけのサンドイッチと水筒を残したまま、丸太に腰掛けていたはずの赤髪の剣士は跡形もなく消えていた。 「あれ?どこ行ったんだ?ししょ──」 突然いなくなったディオスクロイにオルヴェは首を傾げつつ来た道を早足で引き返すと右手の深い茂みが音を立てて揺れる! ……もしかしてこの先に居るのかもしれない、とオルヴェが茂みに近づいてみると飛び出てきたのは赤い髪の男でも魔物でもなく頭に葉っぱをつけた癖っ毛の金髪の少女──アリシアだった。
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「オルヴェ!!夜中にコソコソ何やってるのよ!?」 「えっ!!あ、アリシアぁ!?」 どうしてここに、なんて疑問を呈する隙もなくアリシアの後ろから続々とアルゴノーツのギルドメンバーたち、そして女冒険者のウィラフまでもが姿を現しオルヴェは大パニックに陥る! 「お前ら!?それにウィラフさん!なんで!?」 「君がいない間、ちょっとアリシアちゃんたちの手伝いをしていたのよ」 「ウィラフさんと一緒に冒険!?いいな〜お前ら!オレも一緒にっていてててて!」 壊れたネジ巻き人形のように頭をあちこちに向けていたオルヴェだったが仲間たちがウィラフと共に探索を進めていた話を聞くなり即座に正気を取り戻しアリシアに詰め寄る。 ……この期に及んで暢気に自分も憧れの冒険者と一緒に冒険したかったと不機嫌丸出しで宣う少年の頬をアリシアの細い指がつまんで引っ張った! 「なに寝ぼけたこと言ってるの!羨ましがってる場合じゃないでしょ!」 「夜に一人で出歩くなんて、それも僕たちに何も言わずに出るなんて危ないですよオルヴェくん!?」 「あー、エド、実はこれには訳があってぇ……」 「ほ〜う、それじゃあどんな理由か聞かせてくれや」 「うげぇ……こういう時だけ元気になりやがって……」 珍しく厳しい口調で叱りつけてくるエドにしどろもどろになりながら後退するオルヴェだったが、するりと背後に回り込んだヴィーザルに拘束され悪態をつく。 ウィラフの方へ必死に視線を送るが苦笑いしながら両指で小さなバツを作られ、そのままオルヴェはアリシアたちの手により少し離れた場所へと引きずられて行った。 (早く話したほうが良いんじゃないですか、マスター?嘘は苦手でしょう?) (無理だって!だって師匠に『私との修行は誰にも口外するな』って言われてるんだぞ!?) (……あんな怪しい人物の言葉を信じるんですね) ベータから冷たい言葉を浴びせられても、オルヴェには『それ』をどうしても口にできない理由があった。 ……ディオスクロイの試練を受ける際に最初に交わした『ベータ以外の誰にも話してはならない』という約束、そして破ってしまえば勇者の資格を失ってしまうのだ。 折角修行の成果を実感できたのにこれで終わりなんてあんまりじゃないか! だが涙でうるんだ目で嘆願した程度で許してくれるような幼馴染たちではないのはオルヴェが一番よく知っている。 「……ハッキリ言わないとこっちも容赦しないから」 「そ、それは」 「さぁ、何をしてたか言いなさい!今なら説教ですませてあげてもいいわよ!?」 何を言っても目を逸らしてばかりで中々答えようとしない少年に痺れを切らしたアリシアは不満げに歪んだ顔をぐっと近づけると甲高い声を張り上げる! ……無言の睨み合いが続く中、青い顔を俯かせていたオルヴェはやがて観念したように唇を震わせた。 「……てた」 「?」 「し……修行してた、『一人』で!!」 大声で圧倒するように叫びながらオルヴェは神妙な表情で固まったアリシアと仲間たちの反論を許さぬ勢いで矢継早次に渾身の弁明を繰り出した! 「ほら!オレ復帰遅くなりそうだから早くみんなに追いつけるようにって思ってさぁ!」 「でも夜に修行しなくても……朝起きられていないじゃないですか」 「それはアレだよ!修行のシーンなんて恥ずかしくて白昼堂々見せられないからだ!」 「白昼堂々見せられない修行って何してるんだよ」 「色々だ!男には色々あるんだよ!な!ヴィーザルとエドなら分かってくれるだろ!?」 「知らん」 「僕たちが話を聞きたいのは、その」 そのまま畳み掛けるようにオルヴェは近くにいたエドとヴィーザルの肩に両腕を組ませる! だがヴィーザルはすぐに膝蹴りをお見舞いして脱出し、エドもオルヴェの腕を振り払ってはこないものの伝えたいことがあるのかもごもごしたまま俯いてしまう。 ……エドの言葉を代弁するように、イリスはオルヴェたちの間に割って入ると普段の気弱な妹分らしくない真剣な口調と表情で少年を睨みつける。 「私たちが知りたいのは本当にオルヴェくんは一人だったのかってことなの」 「それはどういう──」 反論を遮るようにイリスが差し出した物体にオルヴェは青い目を大きく見開き息を呑む! ……それは間違いなく、ディオスクロイが置いていった水筒と食べかけのサンドイッチだった。 オルヴェが食べない具材が挟まれたそれを様々な角度から眺めながらイリスは再度刑事のような鋭く冷たい視線を向ける。 「これ、オルヴェくんのじゃないよね」 「きっと昼間に別の冒険者が忘れていったんだよ!さーて早く帰って寝ようぜ!?」 「今日ってそこそこ暑かったのにこのサンドイッチはまだ腐ってない、水筒からも湯気が出てるよ」 「た、多分ゾディアックが持ち主だったんだろ!」 あれこれ言い訳する少年では埒が明かないと踏んだのかイリスが首を振るうとアリシアはオルヴェから彼の腰に差さった剣……ベータに声をかけた。 「ねぇベータ、オルヴェと一緒にいたのは貴方だし知ってる事があるなら教えてもらえるかしら?」 『私ですか』 「!」 ベータに話を振られた瞬間オルヴェの心臓が喉から飛び出しそうなほど跳ね上がる! ……ディオスクロイをあまり良く思っていないベータの事だ、もしかするとイリスたちに『秘密の修行』を白状してしまうのではないか? 彼としても、早くオルヴェに探索に復帰して世界樹の麓を目指してもらいたいのが本心だろう。 「……ベータ」 『……』 額を流れる小粒の汗、喉に詰まった呼吸、オルヴェの高まる体温と湿る手のひらに気づいているのかいないのかベータは少し考え込むように沈黙したが、やがて淀み無く言葉を紡いだ。 『ええ。マスターは毎晩『一人で』秘密の特訓をしていましたよ』 「本当に?」 『勿論。私の名に誓いますよ』 どきん、と跳ねる心臓につられて目玉が握りしめたベータの方を向きそうになるが何とか抑えてオルヴェも真っ直ぐ仲間たちの瞳を瞬きもせずに見つめ続けた。 ベータの答えに難しい顔をしていたアリシアたちだったが、やがてイリスが強張っていた表情を緩めると「疑ってごめんね」とオルヴェに小さく頭を下げてきた。 「ベータさんが言うなら本当に一人で特訓してたんだね」 「あったりまえだろ!最初からそう言ってたじゃん!」 「えへへ……ごめんね、なんかつい小説の探偵みたいになっちゃってぇ」 オルヴェに近づいて犬のように白い髪をわしわし撫で回される少女を皮切りに、アリシアたちも憑き物が落ちたような表情と軽い足取りで二人の方へ駆け寄って来る。 「まぁ、どうせ冒険者ギルドか酒場で知り合った冒険者か衛兵あたりに稽古でもつけて貰ってたんでしょ?」 「だからー!本当に一人だったんだって!」 「ふふふ、ベータさんにも言われたしこれ以上は探りませんよ。でも失礼のないようにしてくださいね?」 「信じてないなお前ら……あとなんでベータの言葉はすぐ信じたんだよ!?」 「人間だと嘘つくからな。ま、テメェの嘘はすぐに分かるから嘘未満だけどな」 「変なことしてないならいいのよ、無駄に心配しちゃったじゃない」 「心配いらないって!」 『私がついていながらも迷子になりかけるマスターなのに?』 「もう!オレの信用ゼロかよぉ!」 頬を膨らませたまま地団駄を踏むオルヴェ、そんな子犬よりも感情が分かりやすい少年にアリシアたちも腹を抱えて笑い出した。 少年のお目付け役として板についてきたベータの言葉は短いながらも仲間たちの疑惑を晴らす事に成功したというよりも、その主人に対する寡黙で真摯な態度を汲んだようだった。 いつもみたいに軽口を飛ばしあう仲間たちにオルヴェもほっと胸を撫で下ろし、手の中の寡黙な相棒へ小声で感謝の言葉を囁く。 ……本当に自分の行動を心配していただけの仲間たちを見ていると少しだけ申し訳なく感じてしまうがいつか時が来て、その時に本当の事を打ち明ければきっと大丈夫だろう。
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「ふふっ、これで仲直り完了ね!冒険者はチームワークが命なんだからこれからは一人で突っ走らないようにするのよ?」 「はーい……ってウィラフさん、その鞄は?」 アルゴノーツの和解が済んですぐ、少し離れた位置から見守っていたウィラフが軽い足取りで歩み寄る。その手にはいつの間にか頑丈そうな革張りの鞄が握られておりオルヴェは頭を傾げながら様子を伺う。 ……革の表面にはどこかで見たような円と星を組み合わせた紋章が施されており視界に入った瞬間頭の中でピースがはまったような感覚が走る。 「確かこのマークってマルコの服にあったマークと同じ、だよな?」 「ご明察!これは占星術ギルドからのレンタル品、というわけでアリシアちゃん後はよろしくね!」 「アリシア?」 占星術ギルドからのレンタル品、それと仲間の少女に何の関連があるのかと考えている間もなく前へ歩み出たアリシアは頑丈そうな鞄を受け取ると中から銀色の器具を取り出した。 見慣れない天球儀を手早く組み立てる少女にオルヴェはますます首をかしげるしかなかった。 「それなんだよ?」 「ちょっとお高い天球儀、そもそも私達がここに来た目的は貴方のため「だけ」じゃないの」 『別の目的があるのですか』 「ついでって奴だ。そもそもこんなことの為に熟練冒険者(ウィラフさん)を呼ぶわけねーだろーが」 「それもそうだな……っておい!」 「ほらほらあっち行って、集中できないでしょ」 「へいへい」 すぐに二人の世界に入って騒ぎ出したオルヴェとヴィーザルをシッシッと追い払い、アリシアは肩の星術機を起動させ天球儀を上へ掲げる。 グローブ越しの細い指先をかざすと天球儀が燐光を纏い、風も吹いていないのに中の多重円が回りだす。 ……なんだか街の広場にあった風で動く金属の芸術品みたいだ、とオルヴェの頭にぼんやりと思考が浮かんだ。 (アリシアは一体何を……ん?」 目を閉じて眉間にシワを寄せたまま手を動かしている少女を眺めていると不意にオルヴェの視界の端に蛍火のような光がちらつく。 ベータから出る蒼白い光とはまた違う、流れ星のように燃える光の欠片はまるで蛍のようにゆらゆらとオルヴェたちの周囲を舞う。 「虫、いやこれは……」 (……成る程、これが彼女の言っていた『エーテル』ですか) 脳内に響くベータの囁き声、そして眼前に広がりだした光景にオルヴェは口を開けたまま同意するしかなかった。 次々出現した光たちは無軌道に飛んでいるようにも見えたがよく見れば瞼を閉じて詠唱を続けるアリシアに向かって渦潮のようにに流れ込んでいるのだ。 ……これがアリシアの普段見ている世界。 まるで御伽噺から出てきたような神秘的な幼馴染の少女の姿に見とれていると、天球儀やアリシアの指の動きに連動しエーテルの欠片は波のようなうねりと粒から段々と丸や四角のような形状へと変化してゆく。 やがて集まった星の粒子はかつて『東土ノ霊堂』でベータがアルゴノーツに見せたような小さな森の形──碧照ノ樹海のミニチュア風景になる。 その直後ある一点が強く光り輝くと同時にアリシアは金糸の睫毛を勢いよく開眼させた! 「碧照ノ樹海3階の南東最深部!その奥に獣王ベルゼルケルがいる!」 「じゅ──!!?」 ──幻想的な景色にどこか夢見心地気分だったオルヴェの脳味噌の温度が一気に上昇する。 「獣王ベルゼルケルぅ!?なんでその名前が!?」 「わちょっと!急に近寄らないでよバカ!」 『アリシア、我々に事情を説明して頂けませんか?』 「そのことだけどね……」 すると頬を赤らめて言葉にならない声で騒ぐアリシアに代わり、イリスはオルヴェとベータにも見えるように地図の書かれた羊皮紙とエーテル状の碧照ノ樹海を指差した。……よく見ればウィラフもイリスと同じように羊皮紙に何かを写している。 「私たちの本当の目的、それは『獣王ベルゼルケル』の居場所を特定することなの」 「居場所を……?」 『皆さんに調べられるなら既にマギニアが実施しているのではないのですか?』 「レンジャーだろうがゾディアックだろうがドクトルだろうがどこも多忙なんだとよ」 「おほん……この大きい丸が獣王ベルゼルケル、小さいのは森の破壊者とかだと思うわ」 アリシアが指差し数えるのは空中に浮かぶ碧照ノ樹海には巨人の心臓のように脈打つ赤い印、そしてその周囲に集った小さめの赤い点が浮かび上がっており誰の目から見てもその場所に『なにか』が潜んでいることは明白だった。 ……まさかとは思うが、この小さな点全てが魔物なのか!? 「こんなにいるのかぁ!!?熊!」 「オルヴェくん近いですって」 「わ、わりぃ……」 エーテル製の立体マップに突撃しそうになるオルヴェだったが首に巻いたマフラーの首根っこをエドに掴まれる。 ……自分の頭に浮かんで口から思わずまろびでた想像、あまりにも信じ難い事実にたじろいでいるのは仲間やウィラフも同じらしく、アリシアは肩をすくめながら髪を指先に絡ませ、口を「へ」の字にしたヴィーザルも面倒くささを隠しきれない様子で髪をかきあげた。 「だがなんでこんなに集まってるんだよ?それも冒険者が来られないような奥地にだぜ?」 「私が知るわけないでしょ!熊じゃないんだから!」 「うーん……流石にタルシスでもこんなに熊が集まっただなんて話は聞いたこと無いわね。相当気が立っているのか、それとも他になにか別の要因があるのかも」 「別の、要因」 思い出すように唇に手を当てて考え込んでいたウィラフだったが、やがて軽く伸びをすると改めてアリシアたちに感謝の言葉を述べた。 「無理言っちゃったけど今日は本当にありがとう!お陰で助かったわ!」 「にひひ!今後ともアルゴノーツをご贔屓に!」 「ちょっと!頑張ったの私なんだけど!?まぁ、お役に立てたなら幸いですけど……」 「役に立つも何も大助かりだよ!ここまで分かれば後は私一人でも確かめに行けるし……君たちらどうする?」 アリシアとオルヴェの口喧嘩に笑っていたウィラフだったが不意に目を伏せて唇を真一文字に引き締めた。 「僕たちですか?」 「ええ。見るだけとはいえ敵の根城に行くわけだし、何があっても不思議じゃない」 淡々と告げるウィラフの声は極めて冷静だったが、それは何人もの冒険者を飲み込んだ樹海の最深部に挑むという事。 例えるなら底があるかも分からない深穴に身一つで飛び込むようなもの。 顔見知りの新米冒険者、それも同郷の後輩たちにむやみに命を散らしてほしくないというのが彼女の言葉や表情を介してひしひしと伝わってくる。 ──だが、本気なのはオルヴェたちアルゴノーツも同じなのだ。 「でもさ、せっかくここまで来たのに後は任せるなんて『冒険者』には出来ないぜ!」 「それに俺たちが熊の根城を見つけたってことを司令部にもちゃあんと知らしめてやりたいからな」 「あなた達……」 オルヴェたちの選択にウィラフはしばらく両目を瞬かせていたが、やがてその言葉を半分待っていたという風に息を吐いて首を縦に振った。 「やっぱり冒険者はこうでなくっちゃね……分かったわ、アルゴノーツのみんなも一緒に行きましょ!」 「!よっしゃあ!!」 「ありがとうございます!」 「ただし自分の身は自分で守るのよ?みんな出来る?」 「が、頑張るっ!頑張ります!」 「もう!イリスったら緊張しすぎよ?」 胸の中に渦巻く未知への不安と前人未到の好奇心はとめどなく肥大化し続け、危険を天秤にかけてもなお前人未到の樹海を歩くという名誉に心は熱く沸き立つ。 ……それは仲間たちもきっと同じだろう。 役目を終えエーテルの粒子が夜空の藍へと溶けていく景色を眺めながらオルヴェは無意識の内に剣の柄を強く握りしめていた。
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「見て!これ獣王のだよ!」 そう口にするよりも早くイリスは茂みに落ちていた真紅の毛束を指差してみせる。 まだ持ち主から抜けて新しいそれをオルヴェは拾い上げ、点々と森の奥へ続く黒く濁ったシミに鼻の穴を膨らませた。 『99.9パーセント獣王ベルゼルケルの物と一致、比例して生命反応も近づいています。マスター』 「じゃあやっぱりこの近くにいるのか、アリシアの占い通りだぜ!」 「うん!行こっ!」 「っ勝手に走るんじゃないわよ!もう!」 深層に進むに連れ増えてきた赤い獣王の毛束や鋭爪に引き裂かれた樹木の幹を見つける度にオルヴェとイリスの走る速度が上がる。そんな二人の後ろをアリシアたちが少し早足になって追いかけていた。 「若いって良いわね、ふぁぁ……」 「まぁ、オルヴェくんはせっかちなだけですから」 呟くエドにウィラフは首をうんうんと緩く振りながら未開の森をゆく赤いマントを見上げた。 ……オルヴェが一週間ぶりに仲間たちと『再会』したのも数時間前、日が昇ってすぐアルゴノーツは占星術によって導き出された獣王ベルゼルケルの所在を確かめるべく朝露残る碧照ノ樹海へ足を踏み入れた。 様子を見て帰るだけの簡単な調査、されど前人未踏の区域の調査。 早朝の樹海は浅層と何ら変わりないように見えたが、奥から漂う纏わりつくような殺気にオルヴェは無意識のうちに流れる汗を拭った。 「お前ら遅いぞ!早くしないと逃げちゃうかもしれないだろ──うげっ!」 「っそう簡単にボスが逃げるかぁ!!」 「オルヴェくーん!!?」 誘導棒かはたまた木の枝か、右手に掲げたベータをぶんぶん振り回していたオルヴェの顔面めがけて分厚い占星術の本が回転しながらめり込む! 「いてぇ……!」 「全く……ほらここ!さっきの分かれ道ちゃんと書いてないじゃない!地図が間違ってたら今日の探索の意味無いでしょ!」 「まぁ、そうだけどいくらなんでも本は投げるなよ!怪我しただろ!」 『スキャンの結果マスターの身体に負傷は見受けられません。無駄に頑丈ですね』 「無駄ってなんだよベータ!?冒険者は身体が資本なのに!」 「真面目に話を聞け!!」 ベータに会話をパスして面倒な説教を回避しよう、そんな浅い考えは全てお見通しと言わんばかりのアリシアの怒号が響き、オルヴェが顔を上げれば呆れ顔のヴィーザルたちや先に進んでいたイリスも続々と側に歩み寄ってきていた。 「俺らはチンタラ歩いてるんじゃなくて周りをチェックしながら歩いてるんだよ」 「うぐ……」 「まあまあ……目的地までもうすぐですし焦らずのんびり行きましょう?」 「最も、俺たちはどこかのアホみたいに無闇に茂みへ飛び込むような真似はしないんでな」 「ヴィーザルお前なぁ……!」 「二人ともエドくんを困らせちゃダメだよ〜!」 こらっ!と叱りつけるエドやニコニコ笑うイリスもお構い無しのヴィーザルをじろりと睨み返しつつ、オルヴェは膝についた草を払った。 ……そういう事なら今度は嫌になるくらいゆっくり歩いてやろうじゃないか。 オルヴェがむくれ顔のまま立ち上がったその時、森の奥からいきなり地鳴りと間違うほどの絶叫が響き渡る! 「うわっ!?」 「きゃっ!なに!?」 姿は見えないのに身がすくむほどの迫力、木々の中から無数の鳥が礫のように飛び立つほどの獣の咆哮にアルゴノーツはおろか、熟練冒険者のウィラフですらその場でたたらを踏む! 「っみんな大丈夫ですか!?」 「この声、まさか獣王ベルゼルケル──!?」 エドはすぐさま盾を構えて仲間たちの方を振り返り、腰に下げた赤の長剣を抜き臨戦態勢をとるウィラフだったがその後も二三度に渡り耳が破裂するような爆音が響く。 ……獣王ベルゼルケルがこちらに気づいたのかもしれない。 言葉にせずとも最悪の想像が頭の中をよぎり、全員が武器を構え殺気を纏う。 そんな中、不意にオルヴェの険しい眉間が緩み青い目がゆっくりと見開かれる。 「……さっきの咆哮、なんかおかしくなかったか?」 『おかしい、とは』 人間のものとはとても思えない強烈な声、声の枠を超えた音波攻撃にも等しい咆哮……だが今の声にはどこか強烈な違和感があった。 以前にもオルヴェは獣王ベルゼルケルの咆哮を聞いたが、今回の声を例えるなら助けを求めて必死に叫んでいるような、あるいは断末魔のような悲鳴。 「……気のせいとかじゃないのか?」 「ちがう、前聞いた時はこんなビビってるような声じゃなかった……!」 訝しげなヴィーザルに食い気味に反論しオルヴェは獣王の咆哮に耳を澄ませる。 ──オルヴェたち五人でも苦戦した魔獣は一体『何』に怯えている? 「ちょ、オルヴェくん!?」 「オルヴェ!!待って!」 そしてオルヴェは制止の声も振り切って一直線に声の方角へと駆け出した! ──オリバーやマルコ、数々の冒険者を食い物にしてきた相手に慈悲や哀れみの気持ちはない。 だが、あの悲痛な叫びを聞いてしまったらもうオルヴェは火のついた花火のように本能的に走り出すしかなかった。 『マスター!この生命反応は獣王ベルゼルケルではありません!』 「なっ!?」 突然目の前に表示されたベータの青白いスクリーンに一瞬転びかけるも即座に踏み込み速度を緩める。 『これまでのデータと比較した結果、現在探知した生命反応とあまりにも差が大きすぎます!』 「っあの時のは手負いだったし、今見たのが本来のパワーじゃないのか!?森の破壊者が一箇所に集まってるとか!」 『私のレーダーはこの時代の物よりも遥かに高性能です、同種別個と仮定してもあまりにも極端です』 「それってどういう──」 ベータの意見に思考を巡らせる間もなく、また聞こえてきた大地を揺らすような断末魔が響いた次の瞬間、オルヴェたちの前にあった最奥の扉が轟音を立てて破壊される! 「っオルヴェ!急に走り出して一体何の……うっ!」 直後に背後から息を切らせながらアリシアたちが駆け寄ってくるがすぐに顔を青ざめさせ口を覆った。 「アリシア!ベータ!」 『被害はゼロ、ですが……』 壊れた扉の向こうから土煙と鼻が曲がりそうな獣と鮮度の悪い血を煮詰めたような悪臭が溢れ出しオルヴェも思わず吐き気を催す。 扉の先に広がっていたのは大きな広間のあちこちに倒れ込んだ無数の森の破壊者の死体、そして血濡れの状態で膝をついた獣王ベルゼルケルであった。 「獣王……ベルゼルケル!」 「……!!」 オルヴェの声が聞こえたのか獣王は忌々しげに唸り声を上げると身体をふらつかせながら広間に侵入した少年を睨み地鳴りのような唸り声をあげる。 ……だがその体は新米冒険者たちが一目見て分かるほど壊れかけていた。 既に再起不能を迎えているであろう獣王は二本の足で血濡れた大地を踏みしめ、星型の傷がついた額に血管を浮かび上がらせる。 しかしてその気迫は間違いなく碧照ノ樹海を統べる王の風格であり、家臣の死体の山を前にしてもなお冒険者たちを身震いさせる覇気を放っていた。 ──もう、長くない。それを一番理解している相手が自分たちのような『侵略者』をみすみす逃すわけがない。 「……どうやら逃がしてくれる気はハナから無しみたいだな」 「注意して、獣は手負いが一番危険よ」 『レーダーに映る生命力も依然として強いままです』 ウィラフとベータの鋭い指摘にすぐさまヴィーザルが二本の鈍い銀色の歪な剣を抜き、アリシアも赤い星術器にまばゆく光るエーテルを集積し始める。 他の仲間達も次々に臨戦態勢を取り、オルヴェも同じようにベータの青い刃を正面に向け眼前の王を視界の中央に捉える。 「獣王ベルゼルケル──この前の決着を着けるぞ!」 「──!!」 自身の額に傷をつけた青い刃に見覚えがあるのか獣王ベルゼルケルも潰れた眼にギラリと光を宿す! そして新緑の樹海で赤き獣の王と若き冒険者たちがぶつかり合うはずだった。 肌を冷たく撫ぜる『それ』を誰よりも早く感じ取れたのは数々の死線を潜り抜けてきた経験からか、はたまた幼少期から竜殺しとして鍛錬を積んでいたからなのか。 「みんな危ないっ!!」 ──自分の行動を顧みるよりも疾く、ウィラフは咄嗟にオルヴェたちを横へ突き飛ばしていた。
7
「!?ウィラフさ──」 突然ウィラフに突き飛ばされたオルヴェたちはバランスを崩して地面へと倒れ込む。 なんで、とオルヴェが振り向いた時には既にウィラフは冒険者たちの目の前から一瞬で消えており代わりに見えたのは胸と腹に巨大な穴を開けて吹き飛んで来た獣王ベルゼルケルだった。 『マスター!皆さん伏せて下さい!!』 「な──ぐはっ!?」 そのまま獣王ベルゼルケルは大木や地面を巻き込みながら転げ続け数十メートル離れた広間の壁に激突する! 咄嗟にエドが地面に盾を突き刺し仲間たちを庇うも猛烈な風圧がエドの体力と気力を一気に削り取る! 「エド!!」 「みんな僕の後ろへ……!ぐっ!」 透明な風の壁に押され段々と後退させられるエドを後ろから必死に支えていたが、不意に何かを決心したようにオルヴェが剣を杖代わりに立ち上がった。 「ウィラフさん!ウィラ、ごほっ!」 「オルヴェくん!?顔出したら危ないよ!」 自分への呼びかけに応えることなくオルヴェは木くずと砂煙に咳き込みながらもウィラフの名を何度も呼び続ける。 ……普段の自信と勇気に満ち溢れているオルヴェの顔は取り返しのつかないことをしてしまった悲嘆と焦燥に歪み、幼馴染のエドですら一瞬なんと声をかけたらいいか戸惑う。 『マスター、落ち着いてください!』 「落ち着いてられるか!ウィラフさんはオレたちを庇って……!!」 『彼女の生命反応はまだあります!それよりも──!!』 その時、大地が弾けるような音を立てながらぐらりと傾いた。 「わっ!?」 同時に降り注いでいた陽の光が遮られ、オルヴェたちの背後から巨大な獣特有の生温かい鼻息が吹いてくる。 生臭く仄かに鉄の香りがするそれはまるで見えない無数の殺気の矢のようで、オルヴェたちの全身に射抜かれたような悪寒が走る。 ……震える下唇を噛み締め、武器を構え振り返った先に『それ』は鎮座していた。 ライオンのような青いタテガミにヤギのように曲がった巨大な角、そして拳闘士のように全身の筋肉が膨れ上がった身体を持つ獣面の巨人。 『──あの時私が探知した巨大な生命反応、どうやらこの魔物だったようです』 ──密林の王、ケルヌンノス。 普通なら碧照ノ樹海にいるはずのない、オルヴェたちも図鑑の中でしか見たことのないような強大な魔物であった。 「……まさかコイツが熊たちをやったのか?」 「っあれだけの魔物をたった一体で!?」 ヴィーザルが漏らした推理に思わず叫びかけた自分の口を咄嗟に抑えたエドだったが、ケルヌンノスは冒険者たちの反応を気にも止めていないのか血で濡れて赤くなった拳を乱雑に振るう。 その度に赤と黒の毛が混じった生臭い液が降り注ぎ、冒険者たちは喉奥から込み上げる物をぐっと飲み込む──よく見れば周囲の森の破壊者の死体にはどれも拳の大きさと同じくらいの穴が開いていた。 「……逃げるわよ」 「っアリシア!?」 ……最初に星術器の電源を落としたのはアリシアだった。 その言葉にオルヴェは勢いよく振り向いたが、アリシアはそれよりも何倍も早く詰め寄りまくし立てるように声を荒らげた。 「どうするも何も、ウィラフさんもやられちゃったし私たちじゃかないっこないわよ!?」 「っでも……!!」 少女の言葉に反論しようとしたオルヴェだったがぐっと喉奥に息を飲み込んだ。 ……アリシアは震えている。冷や汗を流し顔を青ざめさせヒステリックに息切れしながら睨みつけている。 だが彼女の赤い瞳は今も理知の光を宿しており、その視線はオルヴェたちでもなければ背後のケルヌンノスでもないもっと遠く……『戦いの先』を見据えている。 『──バイタル低下を確認、ウィラフへの治療を開始しなければあと10分以内に心肺停止に陥ります』 「衛兵隊を呼んでいる暇は無いってことですか……」 「だが熊を皆殺しにしたケルヌンノスがみすみす俺達を逃がすか?」 「……だからどうしようもないのよ」 ヴィーザルの言葉にアリシアは唇を強く噛んで沈黙するが、言葉を放った少年自身も苦々しい表情を浮かべて俯いている。 ケルヌンノスはアリシアが踏んだ木の枝の乾いた音に呼応するように赤い双眸を向け、崩れた林と獣王ベルゼルケルの下では今もウィラフが生死の淵を彷徨っている。 口にしなくても全員分かっている──逃げても逃げなくても、進む道は茨の道だと。 (畜生、オレ……リーダーなのにこんな時になんにも思いつかないなんて……!) ……自分はアリシアほど賢くはないし、ヴィーザルのように冷静ではない。イリスやエドみたいに爆発力や協調性があるわけでもない。 だけどこの状況で黙っているなんてアルゴノーツのリーダーとして、なによりレムリアの宝剣に選ばれた勇者がこんな弱腰じゃあ格好悪すぎる!!──オルヴェの青い瞳の中で蒼い剣が星のように煌めいた。 「……なぁベータ、今のオレなら『アレ』使いこなせると思うか?」 『アレ、ですか』 「ああ……『第一の鎖』だ」 ヴィーザルが蜂蜜色の目を見開き、アリシアが『ダメよオルヴェ!』と身を乗り出して顔を青ざめさせる。 『……マスターの現在の力量から推測すると出力はおよそ50%程度でしょう。勝率はもっと低い』 「っ……」 『ですが──それは以前のマスター一人での場合です。誰かがウィラフの治療にあたり、残りのメンバーを含めてケルヌンノスと交戦した場合なら……可能性があります』 淡々と冷酷にも聞こえる正論を告げながら、ベータの碧翠の宝玉が目のようにアリシアたちの方へと向けられる。自分たちを青く照らす光はまるで、英雄譚に出てくる勇者を見るような期待で満ちていた。 『……それに、マスターは毎晩彼の元で修行していますよね。なら──不安はないでしょう?』 ……そんな目で見られたら、恐怖も不安も吹き飛んでしまうじゃあないか! 「っじゃあだれかウィラフさんの治療に当たらないと!」 「オレが!ベータならすぐに治せるだろうし……」 「ダメ!ベータを使える貴方がいないとまともに戦えないわ!!」 「ウィラフさんのことは僕に任せて、すぐに向かいますから!」 「頼んだ!」 くすぶっていた闘志に火がついてからのアルゴノーツは早かった。 荷袋を破きウィラフの救援に向かうエドはエプロンのあちこちに薬品や包帯を詰め込み、それ以外の物資をオルヴェたちは素早く己の懐へねじ込み武器を抜く。 ……少年少女たちの身体に血の気が戻るのを見届け、ベータはもう一度オルヴェを見上げる。 あれだけ悩んでいた少年の顔は既にヒーローの顔になっていた。 『マスター、私の力(ヒーロー)が最後に肝心なのは心の持ちようです……ご武運を!』 「ああ──やろう!」 ……オルヴェの全身に漲りだした力は以前と違い、まるで最初からそこにあったかのように馴染んでいた。
8
エドがウィラフの方へと駆け出すと同時にケルヌンノスは咆哮を上げ屈強な脚の筋肉を膨張させる。
「──っさせるか!!」
「いけっ!『オレ』!!」
即座にアリシアの肩にある星術器の『あぎと』の様な収束機が大口を開き、獣の脚へ何本もの氷柱が一斉に掃射される!
氷に切り裂かれた鮮血が赤い線のように散り、続いてオルヴェの剣から飛び出した青白い残影がケルヌンノスの前へ立ち塞がる。
ケルヌンノスは氷柱と残影をまるで路肩の小石をどけるかのように脚を腕を一振りし、それだけで氷柱と残影はバラバラと霧散する。
……だが、ケルヌンノスはレムリアの宝剣が持ち主の闘志で無限を超えることも、空気中に無数にエーテルが存在することも知らない。
『マスター上です!』
「分かってるって、よっと!」
ベータの声に合わせオルヴェは振り下ろされるフックの連撃を紙一重で回避しながら広間を脱兎のごとく走る。
……第一の鎖の解放で強化された身体能力は以前よりも格段に強く、持続時間も長くなっているが短時間で決着を付けるのに越した事はないだろう。
ヒットアンドアウェイを繰り返す少年を踏み潰そうと振り上げられた巨大な足に横から飛んできたエーテルの雷光に撃ち抜かれケルヌンノスは激痛に身悶える。
『───!!』
「どうやら雷が苦手なようね……さて、私の術と貴方の体力、どっちが先に尽きるかしら?」
オルヴェが残影と本体で仲間たちへの攻撃を逸らし、星術器をギラギラ輝かせながらアリシアは眼前のケモノを見据える。
その攻防の合間を縫ってヴィーザルが毒を塗った投刃を投げつけて支援し、イリスの鋭い槍がケルヌンノスの身体に何度も突き刺さる。
……そんな彼らを背にエドは腰ポーチから治療に不必要な物品を投げ捨てつつ獣王ベルゼルケルの死体の方へ走る。
「ウィラフさん!っくそ……!」
既に獣王ベルゼルケルの死体にはどこから腐臭を嗅ぎつけたのか親指大のハエが飛び回っており、それらを剣で追い払いながらエドは茶色の目を凝らす。
獣王ベルゼルケルの身体の下、赤黒い海の中に力なく横たわる金の輪をはめた腕は既に土気色になり始めており、まだ息があると知っていても目の前の光景に心臓が止まりそうになる。
「っ大丈夫、すぐ助けますから!」
エドは外に出ているウィラフの腕を縛ると盾と盾用ジャッキを地面と死体の間に突っ込んでジャッキを起動させる。
──押し潰されている相手を急に引き抜くと後でショック死する事がある。
エドは冒険者ギルドの講習で聞いた曖昧な知識を辿りながら慎重にジャッキを上げ、その間にも後ろから響く剣戟と衝撃音は止まず強まる動悸をぐっと喉の奥へと押しやり手元に集中した。
瀕死の怪我人に失われた退路、そして冒険者になって一ヶ月も経っていないような者たちが相手にするにはあまりにも強大すぎる魔物。
……だとしてもアルゴノーツは引き下がる訳にはいかなかった。
「──!!」
「とおぉ──りゃぁぁっ!!」
度重なる残影と星術の妨害に歩みを止めたケルヌンノス目がけ、槍と共にイリスが裂帛の雄叫びを上げながら飛び降りその頭蓋に両刃の槍を突き立てる!
「っ硬ぁ……!」
鋭い槍の切っ先はケルヌンノスの脳漿をえぐる前に、背中と首を覆う青いタテガミによって受け止められていた。
例えるなら巨大な石柱に向かって全力で『突き』を入れたような衝撃、痛みを伴う痺れに指先も両顎も震えがとまらない。
(なにこの頑丈さ……穂先が割れそう)
「イリス!!」
「うん、大丈夫!でも早く取らないと……!」
木の上から呼びかけてきたヴィーザルにイリスは軽く頷きつつ、すぐさまポシェットからナイフを取り出すと槍に絡みつく毛を切断し始める。
青い剛毛はまるで木の根のように槍に絡みついており引いても押してもビクともしない、更に下から聞こえてくる剣戟がイリスを次第に焦らせ冷えた汗が額を流れ肌に触れる空気もまるで火傷しそうなくらい熱く感じる程──熱い?
「な、ベータ……何かおかしくないか?」
『おかしい、ですか?』
「妙に暑いと言うか、熱い──」
その異様な熱気を感じ取ったのは地上でケルヌンノスを惹きつけていたオルヴェとアリシア、そして投刃を構え潜伏していたヴィーザルも同じく、突然攻撃をやめその場でうずくまった魔物の方を振り向き──冒険者たちは息を呑んだ。
「──ケルヌンノスの角が燃えてる!?」
ケルヌンノスの頭にある象牙色の巨大な螺旋の双角、それが火の粉を纏い、まるで焼けた鉄のように赤熱していたのだ。
「拳一辺倒じゃねぇのかよ……!」
『150…300…現在温度急上昇中。マスター、このままだと我々も発火します』
「おいおい冗談だろベータ!?」
「っや、やだやだ私死んじゃうの!!?」
このままだと焼け死ぬ、その事実はイリスをパニックに陥らせるには十分で顔を引き攣らせた少女は槍をなんとか引き抜こうと必死になって力を入れている。
「早く抜けてよっ!頼むからぁ!!」
「おいイリス!槍はいいから早く降りてこい!!」
「そこから早く降りろーっ!!」
我に返ったヴィーザルが樹上から腕を伸ばすも、地上からオルヴェが大声で呼びかけても最早イリスには返事をする余裕はない。
その間にもケルヌンノスの角はどんどん熱を持ち、オルヴェは滝のように流れてくる汗を拭うとベータを握る両手に力を込めた。
(落ち着け、今一番ヤバいのはイリスだ……!こうなったら──)
……オルヴェが唯一出来る遠距離攻撃──
9
「がっ!あぐぅ!!」 ケルヌンノスの横薙ぎを受けたオルヴェは糸の切れた人形のように宙を舞いそのまま二三度跳ねてから地面に叩きつけられて止まった。 『マスター……!!』 「……ぉ、ゔぇぇ……!げぇっ!」 大丈夫だと言いたくても殴られた脇腹の鎧はぺろりと剥げており、酸っぱい赤交じりの胃の中身が口から止めどなく溢れ出てくる。 『……打撲多数、骨折数カ所に加えて『第一の鎖』解放が間もなく限界に達します』 「そ、そんな……!!」 切り札の『第一の鎖』の解放もまもなく終わってしまう。 ベータが淡々と状況を伝えてくれるのに、今の自分では流れてくる涙や鼻血を拭うために腕を動かすことすらもできない。 ……エドやヴィーザルだけではなく自分までも負傷した絶体絶命の状況、果たしてはケルヌンノスを倒しウィラフを救えるのだろうか? 『……マスター、少し提案があるのですが』 口だけで動かない体、鈍い心拍、打ちのめされた顔つき──ここらが潮時だろう。この少年は頑張ったがそれでも自分(ベータ)の期待を満たすには足りなかった。 『……マスター、身体の主導権を明け渡してもらえますか』 「しゅど……?」 『ええ、貴方はここで倒れてもいいかもしれませんが私には大切な使命がある。……私に体を渡してくれればこの状況も、仲間の命も、貴方の名声も、必ず好転させると誓いましょう』 ──文句のつけようがない取引だろう。 この少年と一緒にいてしばらく経った。 彼が仲間を大切にしていること、責任感が強いこと、英雄に憧れていること、オルヴェの考えそうなことは全て手に取るように分かる。 ……人類全体の傾向として、命の危機が迫り自分が助かるためならばどんな細い蜘蛛の糸にだって縋り付くものだ。 「……いい……まだ、戦える」 『何故?内臓にもダメージを受け、今にも倒れそうなのに何故まだ戦おうとするんですか?』 私なら貴方(オルヴェ)をもっと上手に使える、と言いかけてベータは口を噤んだ。 全身傷だらけ、どんな熟練の戦士でもこんな状況に陥れば笑っていられるはずもないのに。 「だって、まだ負けてないだろ……オレは!!」 涙に濡れた少年の目は遠くで暴れるケルヌンノスを真っ直ぐに捉えている──そう、まだ闘志を燃やしていたのだ。 「今もアリシアやエドたちが戦ってるのに、オレだけお前に任せて楽するなんてリーダーの風上にも置けないぜ……頼むベータ、手を貸してくれ!!」 痛みに呻きながらオルヴェは剣を杖代わりに立ち上がる。メラメラと輝く青い瞳に映った翠の宝玉はわずかに明滅し、やがてため息のような音を鳴らした。 『……一つだけ方法があります。ただしこの技を使用した後、私はしばらくの間スリープモードに移行します』 「!!……協力してくれるのか!?」 『よく聞いて下さいマスター、私がスリープモードに移行すると貴方は残影を出せなくなります。私が再度目覚めるまで持ちこたえる、或いは相手を倒せる自信と覚悟があるのなら──手を貸しましょう』 ……最後は小声で言葉を紡ぐとベータは選択を待つように黙り込み、オルヴェは迷うことなく剣の柄を強く握りしめた。 「……ありがとな、ベータ……絶対勝つぞ!」 そしてベータの宝玉が瞳孔のように収縮すると全身に剣の柄の部分に盾のような部品が形作られ、そこへ青い光の刃が差し込まれると刃は二つに裂けて一つの巨大な大剣へと形を変える。 立つのもやっとだったオルヴェの全身にはまるで第一の鎖を解放したかの様な力が漲り、青い光の帯と粒が全身から立ち昇ってくる。 ……今なら、行ける!! 『──あなたの前に立ち塞がるものを思い浮かべ、私を振り抜いて下さい、全力で!!』 「!はあぁぁぁぁ────ッ!!!!」 オルヴェは甲冑に包まれた右足を大きく踏み出し、肩に担いだ大剣を両腕だけではなく全身で、体に残った力全てをこの一撃に結集させて一気に振り抜いた! その瞬間、青白い刃が弾けるように無数の光の線となって一斉に広間へと放たれた! ……星術で焼いても大剣で叩き伏せても投刃で動きを止めても、倒しても倒してもケルヌンノスに呼ばれて湧いてくるボールアニマルの群れ。 戦場に残されたアリシアたちは機動力をそがれたヴィーザル、槍というリーチのアドバンテージを失ったイリス、壊れかけの星術器で相手していた。 「ぁあもう!きりが──!」 アリシアが忌々しげに唸ったその直後、右から夜明けのような碧い光が溢れ出しそちらへ振り向けば頬のすぐ横をガラスの欠片のような光が尾を引きながら飛んで行った。 『───!!』 「わっ!!」 「っ!何だ!?」 ──その光で出来た投げナイフのようにも、流星のようにもみえる斬撃は何重にも反射しながらアリシアたちの目の前のボールアニマルを斬り伏せ、ケルヌンノスの身体を貫く! きぃん、と甲高い澄んだ音を立てながら反射する光の刃は四方八方を飛び交いながら、そのまま 広間の端にいたエドに今にも飛びかかろうとしていたボールアニマルですら真っ二つに断ち切った! エドはしばらく硬直していたが攻撃がいつまで経っても来ないことに恐る恐るガントレットを下ろし、静まり返った周囲を唖然とした表情まま見渡した。 「!!っ…… た、助かった?」 ……突然現れた乱反射する光の刃が『自分たちを避けて』周囲にいた魔物たちを蹴散らしてしまった。 今度こそオルヴェたちの身に何があったのかと頭をよぎったが突然獣王ベルゼルケルの下からうめき声が聞こえた。 (!?……まさか!) すぐにジャッキと死体の間に茶色い頭を突っ込むと先ほどまで声も出せないほどの重傷だったウィラフが呻いていたのだ。 強い圧迫と衝撃による赤と紫の怪我だらけだった褐色の肌はまるで『押しつぶされてなどいなかった』かのように健康的な膨らみと艶を取り戻している。 ……エドが自分の額に手を這わせてみると、ボールアニマルにぶつかられて腫れていた目元もすっかり元に戻っていた。
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「……すげぇ」
目の前の光景にオルヴェは大剣を下ろしてただ立ち尽くしていた。
先ほどまで大量にいたボールアニマルたちを一掃し、これまでのどんな敵よりも強かったケルヌンノスが膝を付く……他の誰でもないでもない、
11
伸びをしながら青空を見上げると、すでに太陽はオルヴェたちの頭上を通り過ぎようとしていた。
「みんな凄いよ!ケルヌンノス倒しちゃった!」
「まぁ、あたしたちなら当然よね」
「それはともかく早いとこウィラフさんを運ぶぞ」
オレンジの瞳をキラキラ輝かせ、二つのおさげをブンブン振り回しながらスゴイスゴイと繰り返すイリスを宥めつつアリシアも満足気に頷いてみせる。
エドとイリスの手によって獣王ベルゼルケルの下から救出されたウィラフは未だに意識が戻らないが大事には至っておらず、規則正しく呼吸を繰り返す体を見たオルヴェは戦闘中ずっとあった胸の中のしこりが取れたような気がした。
「ところでオルヴェくん、ベータさんは……?」
「ああ、実はベータなんだけど」
ミラクルエッジを使った反動で眠っちゃって、説明の為に鞘からベータを抜いてみせると濁っていた宝玉がわずかに明滅したように見える。
「ん?ベータ?ってうおぁぁ!!?」
オルヴェとエドが覗き込んだ直後、蒼い剣身と翠の宝玉が光りだし獣王ベルゼルケルとケルヌンノスの死体が光の粒子となってちりちりと空へと舞い上がり、宝玉の方へと吸い込まれる!
「オルヴェくんなんですかこれ!?なにこれぇぇ!!」
「ちょっとオルヴェ!?どういうことぉぉぉ!?」
「うわぁぁぁぁ!!知らねぇぇぇぇぇ!!!?」
何があったと驚愕混じりに叫んでくる仲間の声をほぼ掻き消すくらいの暴風で宝玉は激しく明滅する!
やがて、圧倒的な吸引力で光になったボスをを吸い付くし甲高いチャイムと共にいつもの無機質な声が聞こえてきた。
『エネルギーチャージ完了。数件の権限ロックを解除しました』
淡々とまるで『食べたら出すものだろう?』とでも言いたげに言葉を紡ぐベータ。
そして冒険者たちは五秒ほど硬直し、そして一斉にオルヴェの握る剣へ詰め寄った。
「ベータぁ!?さっきのアレなに!?ってどういう目覚め方なんだよ!!」
「どーすんだよオルヴェ!!?まだ剥ぎ取ってもないのに魔物が光になったぞオイ!!」
『落ち着いてください、一から順を追って説明します』
まくし立ててくる冒険者たちを見たベータはなんとも可哀想なものでも見るようにため息をつくと宝玉から青緑のホログラムが空中へ投影される。
『私の機能の一つに有機無機問わずあらゆるエネルギー源を吸収し、自身やマスターのエネルギーに変換する物があります。先ほど皆さまが見たのもそれでしょう』
それ、という言葉にオルヴェの脳裏に光の粒になってベータに吸い込まれていった獣王ベルゼルケルやケルヌンノスの姿がよぎる。
……一瞬だけ、『その気になればベータは自分たちもああ出来るのではないのか?』と薄ら寒いものも浮かんだ。
『私が破損状態であり多数の権限がロックされている状態なのは以前お話しましたね?そのロックを解除する方法の一つが貯蔵エネルギーを対価に修復するものです』
「ってことは、強い魔物を倒したらベータの封印がどんどん解けるってことか!?」
『そのように考えてもらって構いません、最もそこを徘徊している魔物ではあまり生命エネルギーを変換できませんがね』
「うぉぉぉ!!すっげぇ!!」
淡々としながらもまるで夢のような話に疲労がにじんでいた冒険者たちも少しずつ目を輝かせ、特にオルヴェなんかはその説明だけで胸は今までで最大級にときめかせながら食い気味に歓喜の言葉を漏らしていた。
樹海の強い魔物を倒してその力を取り込む……まさしくロマンの塊のような設計にオルヴェの脳内ではすでにベータ片手にまだ見ぬ迷宮のヌシたちを倒す妄想で溢れていた。
「ふふ、貴方の設計者って結構ロマンチストだったのかもね」
『実現可能かどうかは分かりませんが、マギニアの発電所から電力を取り込めば効率よく多くの権限を解除できるでしょうね』
「え!?流石にそういうのはちょっとダメじゃないですか?」
「そうだぞベータ!人を困らせてまで強くなるのは違うぜ!」
「……強くなるのはいいけど今回大赤字だぞ?」
盛り上がるオルヴェたちに割って入るようにヴィーザルは声を低くしてさっきなんとか回収した双剣──真ん中から完全に折れて使い物にならなくなった──を見せつけてきた。
「あー、確かに……今回の戦いは損害が多かったですねぇ」
「薬代でしょ?それにオルヴェとエド以外は武器買い替え、ってはぁぁぁ……」
「ま、まあ全部食われた訳じゃないし!ほら角とか爪は残ってるじゃん!」
『爪も角も状態は粗悪ですよ、マスター』
「テメェが言うなお喋りソードが!!」
「ヴィーザルくん落ち着いてぇ!?」
渾身のフォローを水の泡に返すベータにオルヴェもため息をつきつつも胸の中は今も高揚感と達成感に満ち溢れ、ウィラフをベースキャンプへ運ぶために立ち上がろうとして尻もちをつき、今になってやっと足が震えだしたことに気づいて幼なじみたちと顔を見合わせて脱力気味に笑いあった。
「……あれが彼の言っていた『レムリアの宝剣』の力、か」
……そして自分たちの死闘を、レムリアの宝剣の隠された力を
あとがき
SQXのギルド『アルゴノーツ』 第二迷宮の後編だよ! …それはさておき、アンタまた1シーン(vsケルヌンノス)だけで1万文字近くも書いて!! (開始~勝利まで(改行空白のぞき)約11,759字) 前回の更新(2025/08/15)からずいぶん間が空いてしまいましたが、実はちゃんと水面下で進めていました! やっぱりアルゴノーツだとバトルシーンが物凄く書きやすいので、手を付けるまでが長かったけど実際に書き出すと1.5週間ほどで書き切れました。 その分日常パートが難しいんだよねこの冒険者たち…実働隊とは正反対だね 全編合わせて第二迷宮編がとんでもない長文になったのは原作ストーリー構成とNPCの組み合わせ、第一迷宮がベータとの出会いという実質プロローグだった、そしてオルヴェたちアルゴノーツもまだ新米冒険者という条件がそろったのでラグ覇者の山場になりました。 先輩冒険者たちとの出会い、ベルゼルケルやケルヌンノスとの死闘を乗り越えアルゴノーツも落ち着くと思うので、次の迷宮からはもう少し読みやすい文字数とテンポで進められる予定です。 アッネタ切れではないよ!(第二迷宮編を書いている間に今後の展開もある程度最後まで考えられたので安心してね!筆が遅いだけだよ!) もし心優しい読者の方がいたら……どうか感想をいただけると嬉しいです。 『ラグナロクの覇者』シリーズだけまだ感想を貰えていないのが、ずっと心残りでして…どうか作者を成仏させると思って頼みます…!! 最後に、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!また次回も読んで頂ければ幸いです! …ミッション報告やウィラフさんのその後はページ容量の都合で次回!!